五葉山へ

 東日本大震災から二年半以上経ったというのに、ずっと海側に行けずにいた。なんだか胸が締め付けられるようで、悲しくって、街が無くなった現実を見たくなかったのだ。

 そんなことではダメだと思っていた矢先、五葉山登山に誘われ勇気を出し、この頃歩いていないので「畳石」までという条件で参加。

 大船渡側の駐車場にはもう登山者の車がいっぱい。ザックに昼食とコンロを詰め込んで歩き始めると山裾から風が吹き上げ、毛糸の帽子にしたことは正解だった。ジグザグ登りながら下界を見ると確か前はあの辺りに街の屋根が光っていたはずなのに何にも見えない。

 一時間で畳石到着。さっそくコーヒーを沸かし、カモシカの声を聴きながら、持ち寄り昼食を広げ山上バイキングとなった。そういえば地震後山頂近くのシャクナゲ山荘前にとうとうと流れていた水場が枯れてしまったとか。ではこの奥にある水場はどうなっているのだろうと散策に行った。あぁ良かった! 樋を通して水が流れている! ペットボトルに水をくみながら安心した。

 下山途中コースわきの木を伐採したり、登山道を整備している人たちに声掛けしながらんなんで木を切るのだろうと不思議に思ったが聞けず仕舞いになった。

 久しぶりの天気と久しぶりの歩きに満足しながら帰路に着くが、途中ダンプがひっきりなしに行き交う、なんでだろうと横の看板を見ると「太陽光発電‥」と書いてあった。ここにそんな施設ができるのだろうかと半信半疑。

 家に帰り、汲んできた水でコーヒーを淹れながら、今度大船渡や高田に行って被災の現実を受け入れなければと思った。